2016年夏の参院選から18歳の選挙権が導入されることを受け、各政党で若年層向けのマニュフェストが打ち出されています。共産党は10年で大学費用を半額にし、月額3万円の給付型奨学金制度を作るといった選挙公約を掲げていますし、民主党も返還不要の奨学金制度を創設するなどの政策をマニュフェストに盛り込んできました。
これを受け、失われた世代の反応も様々ですが、子供のいる家庭にとっては親の教育負担が軽減されるため歓迎する人がいる一方、就職氷河期世代で非正規雇用に甘んじている独身にとっては腹立たしいという反応がネット上で出はじめています。
失われた世代の人たちのなかには、未だに奨学金の返還を利息付きで続けている低所得者層も多いので、その人たちが納めた税金が給付型の奨学金に使われるともなれば、反発するのも当然といえます。
また、貧困家庭の学生のなかには大学への進学をあきらめて就職の道を選ぶ人もいることでしょう。そういう人たちが納めた税金が、遊び呆けているいわゆるFラン私立大学の学生の奨学金に使われるともなれば、同世代の間でも不公平感が出てくるはずです。
もしこの給付型奨学金を実行するとなれば、その財源を失われた世代や現役のさとり世代に求めるのではなく、団塊の世代の年金給付を削減して確保するほかありません。
いずれにしても、給付型奨学金の創設というのは、本当に成績優秀な1部の学生たちに限定するべきであって、誰でも一律で給付を受けられるような制度にするべきではないです。そもそも、少子高齢化社会になっているわけですので、学生数を確保できずに自然に淘汰されていく私立大学があるはずですが、まったく減少していないのはおかしな話です。学生数を確保しなくては大学ビジネスが成り立たず、それに関連して文部科学省の天下り先も少なくなっていくわけですから、これまでなりふりかまわずに奨学金という形で大学に資金を投入してきた経緯がありました。
つまり、今までは大学経営者や官僚OBが学生を多額の奨学金で借金漬けにして食い物にしてきたわけですが、奨学金が社会問題化してきたことで今までの手法は通用しなくなり、今度はあからさまに税金を直接投入しようという考えへシフトしていくつもりなのでしょう。
これまで団塊の世代が借金1,000兆円を積み上げて将来の世代を食い物にしてきたわけですが、現在の奨学金の社会問題も団塊の世代が学生を食い物にしてきた経緯があるといっても過言ではありません。2種奨学金の融資総額の推移を見れば一目瞭然です。
もし給付型奨学金を実行するのであれば、不必要な私立大学の廃校をすすめ、天下りを禁止することが絶対条件といえます。また、一番不満が頻発するのは、現在も奨学金を返還中の氷河期世代やゆとり世代になるかと思いますが、少なくとも利息を無効とする過払い金返還制度の導入や奨学金ローン減税など何等かの救済策を打ち出さなくては誰も納得いかないはずです。
また、名称についても奨学金ではなく、学生ローンと明記するよう義務付けるべきだと思います。