日本における「失われた10年」と「少子化社会」についての考察。
日本ではバブル経済の崩壊後、長期的な経済不況に陥ったが、この1991年から2002年の間までが失われた10年(lost decade)と呼ばれている。この時期に銀行や証券会社などの企業倒産が相次ぎ、日本の経済状況は悪化の一途をたどった。だが、政府は有効な景気回復策を見いだせず、結果として不況が長期化することになったのである。
21世紀に入った現在でも、特に景気の回復した実感はない。銀行の不良債権処理は進んだものの、一般的なサラリーマンの雇用環境は依然として厳しい状況が続いている。そのような理由から、失われた10年ではなく、時に失われた20年とみなす人もいるようだ。
今後の日本は高齢化社会、つまり裏を返せば少子化社会ということになるが、労働力人口の減少による若い世代の負担が増えることが予測されており、今後も大幅な景気回復は見込めそうにないのである。
――バブル崩壊が生み出した就職氷河期世代
・ロストジェネレーション(失われた世代)のゆくえ
少子化社会とも関係しているのが、いわゆるロストジェネレーション世代の存在だ。
長期的な不況が生み出したのは短期的な労働力人口の減少だけではなく、100年単位にわたる労働力人口にも影響を与えている。就職氷河期時代の学生のなかには、止むを得ず非正規労働につかざるを得なかった人が多数存在しているわけだが、この世代は10年が経過した現在でも労働関係は改善していない。
この収入が安定していない世代は、子育てはおろか、その日暮らしもままならずに派遣労働を送っている人々も多い。また、将来的にも、この失われた世代が安定した労働環境を得ることは難しく、結果として結婚や子育てをあきらめざるを得ず、ますます少子高齢化に拍車がかかる事態となっているわけだ。
実は当サイトの運営者もこの就職氷河期時代の最中だったわけだが、当時の就職率は50%代だったかと思う。結果として安定した正社員の仕事につくことはできなかったのだが、派遣労働でしのがざるを得なかった時期がある。派遣労働での収入は厳しく、いわゆる消費者金融での借り入れでしのいでいたわけだが、不安定な労働環境ではその日暮らしをするのがやっとの状態なのである。
だが、私は幸いにも、その後に事業を立ち上げ成功したので、結果としては正社員につかずによかった。その意味では、ロストジェネレーション世代に生まれたことに感謝してもいる。もし当時、うっかり一流企業にでも就職してしまっていたら、年収でいえば、せいぜい数千万円止まり、おそらくは都心に猫の額ほど広さのマンションをローンで買うか、国産車を1~2台所有するような生活レベルで満足せざるを得なかったであろう。
おそらく一生かかっても億単位の年収を得ることはできなかったに違いない。そういう意味では、ロストジェネレーション世代であることに感謝してもいるのである。
だが、現在でも30代~40代の世代のなかには、不安定な派遣労働でいわゆる「ワーキング・プア」の状態の人も多い。日本の年功序列型の社会制度では、20代を非正規で就業していた場合は、その後、安定した仕事には就けない。これがロストジェネレーション世代の現状なのだ。
この状況を見るに、決して本人の責任のみでは済まされない事情があるものと思う。就職氷河期時代には、求人自体が実際に極めて少なかったわけだから、なかったものはしょうがない。また、私のように、誰でも自分で事業を起こして成功できるというわけでもないのだ。結果として非正規労働に従事せざるを得なかったというのが、このロストジェネレーション世代――失われた世代――の実態なのだ。