団塊の世代が徐々に後期高齢者に移行しつつありますが、70代でまだ働いている高齢者も増えてきているようです。
年金の財源が逼迫化する状況のなか、支給開始年齢を遅らせることが議論されていますが、90歳まで労働することは身体的な負担を増大させ、医療費、介護費用の増大など、深刻な社会問題に発展する可能性があるとぼくは考えています。
竹中平蔵氏が「日本人は90歳まで働くことになる」との発言をしていますが、70歳以上ともなると、脳卒中や心筋梗塞、がんなどのリスクが次第に高くなっていきます。高齢での労働は身体的な負担が大きく、老体にムチ打って働く人が増えるに従い、健康上のリスクが増大し、今後は75歳ぐらいで脳卒中などを発症する高齢者が多発する事態になっていきます。
一旦、脳卒中などになれば、それに伴う治療のための医療費は、手術やリハビリなどで1000万円単位の費用がかかります。
さらに後遺障害が残り、要介護状態となった場合、毎月30万円以上の介護費用を税金や介護保険料で負担することになり、平均寿命まで15年間生存できたとしても、その間に4000~5000万円といった膨大な社会的なコストがかかります。
その上、氷河期世代も介護せざるを得なくなり、場合によっては介護離職者が多発する結果になるかもしれません。一旦、離職者となれば、その後の復職は難しく、介護が終了した60歳前後の時点で生活保護を受給する結果となり、莫大な社会的なコストがかかる結果になります。
年金支給の開始年齢の引き上げで財源を確保できたとしても、その数十倍もの医療費や介護費用、生活保護費がかかる結果となり、気づいた時には日本の社会保障制度は崩壊していることでしょう。
総合的な社会コストを抑制するためには、十分な年金を60歳から支給し、そのまま90歳あたりまで健康を維持してピンピンコロリでいってもらうのが一番安上がりな方法なのです。むしろ、逆に、65歳以上の労働を禁止するぐらいの思い切った政策が必要であり、団塊の世代を除く高齢者を大切にすること、それは将来世代を大切にすることでもあるのです。
日本の歴史において、90歳まで労働する事態になることは未だかつて経験したことがありません。
90歳まで働く社会になれば、医療費や介護費用、生活保護費が激増し、社会保障制度が崩壊する結果になるものと思います。