氷河期世代は死ぬまで氷河期なのか?

年金のカット法案が国会で審議されていますが、賃金の下落に応じて年金支給額もカットする方向で調整が進められているようです。これは若年層へ配慮した改革といわれていますが、果たして本当にそうなのでしょうか?

現在、政府がインフレターゲットを2%に設定しているなか、今後、氷河期世代が年金受給を開始する20年~25年後には、ある程度の物価上昇が見込まれています。加えて、最近はヘリコプターマネーの話題がちらほらと出てきているなか、ハイパーインフレーションを示唆するエコノミストも少なくありません。

もし物価が上昇した場合、相対的に年金支給額は減少してしまうことになりますが、年金はインフレには強いといわれており、物価上昇に伴い、年金支給額も増える仕組みになっているはずです。そのような約束があったからこそ、現役世代もコツコツと年金を納付しているはずです。

それが増えるどころか、年金支給額が賃金の下落とともに減額になるということでは話が違ってきます。我々、氷河期世代が年金を受給するころには、年金を満額納めていてもたったの月額6万円程度という試算がなされているなか、これがさらに減る可能性が出てきたわけです。

もし、これまで賃金が増えていたというのであれば、まだ若年層にとってもメリットはあると思われますが、団塊の世代の雇用を守るために派遣解禁となった後、ここ数十年で実質賃金は大幅に下落していますので、今後も増える可能性は相当低いものとみられています。

加えて、団塊の世代の親をしぶしぶ扶養している氷河期世代も多いです。もし団塊の世代の年金支給額が減額となった場合、間接的にはその減額分の穴埋めを氷河期世代が親への仕送りの形で補てんすることになります。

なので、団塊の世代への支給額を減らすのではなく、氷河期世代の年金負担額を減らさなくては意味がありません。結局のところ、物価上昇とともに年金支給額が増える従来の仕組みがなくなるとすれば、それは氷河期世代がもらえるはずの年金額がさらに減らされるということを意味しています。

団塊の世代が1,000兆円にものぼる借金を積み重ねた上、それを将来の世代に押し付け、さらにあろうことか大切な年金資金を株につぎこみ、5兆円にものぼる大損をぶっこいている状況のなか、さらに氷河期世代の年金支給額まで減らそうという話です。

これまでに団塊の世代が積み重ねてきた悪行の数々については、その評価を後世の歴史家にゆだねることにし、ここではあまり深くは触れないでおきますが、いずれにしても、今回の改革が現役世代の負担軽減になるとは到底思えません。

減額された年金分は親への仕送りという形で現役世代が負担することになるため、これは間接的には、現役世代への増税と同じことではないでしょうか?

このような改革は抜本的な改革にはつながらないため、賃金で年金支給額を減らすのではなく、資産額に応じて支給額を減らす仕組みを考えなければだめだとぼくは思います。