就職氷河期世代の就労支援として、厚生労働省が正社員を雇用した企業への助成金を新設することにしたようです。詳しい条件などは不明ですが、各種報道によると以下のような方針となっているようです。
◆政府案(:詳細不明)
・対象:過去10年間で5回以上の失業や転職を経験した35歳以上
・時期:2017年度から
・助成金:中小企業で60万円、大企業で50万円(半年後と一年後の2回払い)
月に直すと約5万円といったところでしょうか。およそ年収400万円で正社員を雇用した際にかかる会社負担分の社会保険料の1年分程度といったところかと思います。ただ、今まで非正規だったフリーターを年収400万円で雇用するはずがないので、企業にとってはおつりが来る金額かもしれません。
氷河期世代の労働力を非正規の単発ではなく、正規雇用の定期コースで利用するなら、社会保険の会社負担分を1年分無料にしますよといったキャンペーンなのだろうと思われます。
一方で、35歳以上とはいえ、正社員で定年まで雇用するとなると億単位の金額がかかるはずです。まともな大企業なら、50万、60万ぽっちのお金でスキルのない氷河期世代をほいほい採用するはずがありません。
となれば、まともな企業ではなく、もともと正社員の定着率が低いブラック企業が利用する助成金になるものと僕は想定しております。つまり、1年、2年で自発的に辞めていく人が多いブラック企業が利用するケースが多くなるものと思われますので、安定的な正規雇用の増加にはつながらないのではないでしょうか?
この制度を実用的なものにするためには、以下のような条件にしなければ意味がありません。
◆僕の案
・助成金の支給を1年ではなく、最低5年程度の分割払いにする
・定着率の低いブラック企業は助成金の対象から外す
・一人当たりではなく、年収に応じて助成金を支給する
・定着率の高い優良企業には助成金を増やす
つまり、低賃金でサービス残業が当たり前のようなブラック企業は、もともと使い捨てるつもりで労働力を確保しますので、終身雇用などといったことはサラサラ頭にはありません。そのような企業に助成金を支給しても税金の無駄使いです。大企業の電通でもサビ残が社会問題化している状況ですので、中小企業ならなおさらです。
そもそも就職氷河期世代のフリーターにはスキルがないという実態がありますので、助成金で正社員にしようとしても無理があります。これはもうどうしようもないことですので、助成金で何とかなるレベルの話ではありません。
失われた世代は、既に失われ尽くしているのが現実です。なかった世代ですので、もしかするとあったかもというような幻想は捨て去るべきです。
なので、氷河期世代を無理に正社員化しようとするのではなく、ニートやフリーター、あるいは非正規雇用のままでも持続可能な新しい社会の在り方を模索していくべきであると僕は考えています。
具体的には、正社員の社会保険料負担率を現行の15%から20%へと上昇させ、会社負担分も合わせて合計40%へと押し上げることが必要です。合わせて厚生年金の支給額を減額し、国民年金のみの受給者と同じレベルへ押し下げる必要があります。
現役世代には負担が多くなってしまいますが、このような方法しかもう残ってはいないのではないでしょうか?