英国のEU離脱で新たな失われた世代の出現か?

英国がEU離脱の国民投票を実施し、僅差で離脱する結果になりましたが、これにより英国でも若年層を中心に大量の失業者が発生するとの見方が強まっています。

現在、イギリスはEU加盟国ですので、フランスやドイツ、イタリアなどと輸出入する際には関税がかかりません。ヒト、モノ、カネの移動が自由であることがEUの特徴となっているからです。

けれども、今回イギリスがEUからの離脱を決断したことで、今後はヨーロッパ各国との間で関税がかかることになります。この関税率は平均で3%程度といわれており、この程度ならポンド安による輸出のメリットでカバーできるという試算もありますが、貿易は双方向での取引になるため、EUからイギリスへの輸出には逆にデメリットとなります。このため、イギリスへはモノが入ってきにくくなり、日本でも円安の時に生じたような物価高による生活コストの増大が予測されています。

今回の離脱派は、現役ではない年金生活者などの世代が中心となっています。すでに年金で生活しているため、景気がよくなろうが悪くなろうが関係がなく、それよりも移民増加による治安などに関心があった層といえます。

一方、EU内への残留を強く希望していたのは、離脱による就職やビジネスへの影響がモロに出てしまうことになる若い世代が中心です。イギリスでは製造業に従事している労働者の割合は少ないものの、国際企業がイギリスから撤退してしまうことにより、失業率が増えてしまうことになるのは確実です。また、企業収益の低下により、賃金も下落することになってしまうことでしょう。

つまり、今回のEU離脱によって、英国でも新たな失われた世代が出現してしまうことになるのです。加えて、この英国での失われた世代の出現は日本へも飛び火し、フルゆとり世代へのロスジェネに繋がることが懸念されています。

現在の学生はポストゆとり世代(脱ゆとり世代)へと既に移行していますので、かつてのゆとり教育を経験した人は年々少なくなってきてはいますが、現在の大学生の中には脱ゆとり路線へと変更される直前にあたる、最後までフルにゆとり教育だった世代が存在します。

来年、このフルゆとり世代が就職活動を開始すると見られており、今回の英国ショックの影響をモロに受けてしまうと見られているのです。ポンド安・円高が進むことで日本の輸出企業の業績が悪化することが懸念されており、企業も求人の採用数を減らすといわれているため、2018年以降、第3次就職氷河期が到来すると予測されています。

ただ、少子高齢化の影響により、若年層の労働力が恒常的に不足している状態ですので、団塊JRが経験したような過酷な就職氷河期にはならないと考えられており、就職率への影響は限定的なものにとどまるとの予測がされています。一方で、今回の円高と日経平均株価の下落により、膨大な年金資金が消失したとみられており、社会保障関連費用の増大による、さらなる若年層への負担が懸念されています。

日本と同様、英国においても、団塊の世代の身勝手な行動が若年層の失われた世代を生み出しているといえそうです。